全日本時代はよく知らない。
おー、よくにGP行けたなぁ、って感想を持ったくらいだった。
だけど誰に聞いても、いいコだよ、かわいいよ、いつも笑顔でね、
ってみんな可愛くて仕方ないって顔で言う。
人懐っこい笑顔と陽気な喋り方を見て、愛すべきおバカ、と
微笑ましい気持ちになりながら私は勝手に思っていた。
一か八かみたいなライダーは、あぶなっかしいけど
見せ場があるから好き。
なにより今年の開幕戦で勝って、私の目には俄然輝いて見えた。
見える人には見えていたんだな、このコの才能が、なんて
チームに感心しながら、富沢のキラキラ輝く姿が本当にうれしかった。
あのときの期待感ってしばらく感じないものだった。
そんなコが、あんなふうに傷つく姿を、
どうして私たちはなすすべもなく見せ付けられ、
悲しみとやるせなさでいっぱいにされなければならないんだろう。
あまりにあっけなさ過ぎて、どうしたらいいか分からない。
最後に見たのは8耐になるな、なんてイヤな思い出し方だ。
最後だなんて、嫌な言葉だ。
あの人はきっとこう思うだろうから…、なんて
死んだ人の想いを勝手に代弁するようなことは言いたくない。
目を見開いて背けない人もいれば、心が折れてしまう人だっているはず。
目をつぶると、事故のシーンが勝手によみがえってくる。
もうレースなんかみたくない、って気持ちにならずに済みたいって
自分が一番思ってる。
一番星が落ちた。そんな気持ち。
どきどきした。わくわくした。がっかりもした。
ひっくるめてたのしかった。
日本GPの君が代で泣く祥也を見て私も一緒に泣く。
それを楽しみに待っていたんだよ。
さよなら、祥也。
ご冥福をお祈りします。
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